IPFの診断・治療
IPFの診断・治療

IPFが疑われる場合は、まず可能性のある原因や関連する状況(繊維性過敏性肺炎やじん肺などの環境・職業性暴露に起因する間質性肺疾患、膠原病に伴う間質性肺疾患、薬剤性肺傷害など)を検索・除外します。鑑別には、十分な問診および身体所見が重要です。画像所見でUIP(usual interstitial pneumonia)パターンを認めた場合は蜂巣肺所見が必須ですが、この所見が認められた場合、明らかな原因が認められなければ多くの場合、気管支鏡検査や外科的肺生検を行わなくてもIPFと診断可能です。ただし、UIPパターンを認めても、確定困難な膠原病や繊維性過敏性肺炎など二次性のUIPが疑われる場合は、気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄、経気管支肺生検、経気管支クライオ肺生検)などを検討してもよいとされています。
IPFの定義は、肺の線維化が慢性、進行性、不可逆性に経過をする原因不明、予後不良の疾患であり、特発性間質性肺炎の一つです。UIPといわれる線維化が肺に限局して認められます。主に高齢、男性に発症します。その臨床経過は個々の患者によって様々で、予測は困難です。1)50歳以上の男性または60歳以上の女性で、中等症から高度の牽引性気管支拡張/細気管支拡張を認める2)年齢が70歳以上で、HRCTにおける広範な網状陰影(30%以上)を認める3)BALで好中球増加および/またはリンパ球増加なし4)臨床医、放射線医、病理医による確信度の高いIPFの診断、のずれかの所見がある場合にIPFと診断される可能性があります。IPFの定義は、肺の線維化が慢性、進行性、不可逆性に経過をする原因不明、予後不良の疾患であり、特発性間質性肺炎の一つです。UIPといわれる線維化が肺に限局して認められます。主に高齢、男性に発症します。その臨床経過は個々の患者によって様々で、予測は困難です。1)50歳以上の男性または60歳以上の女性で、中等症から高度の牽引性気管支拡張/細気管支拡張を認める2)年齢が70歳以上で、HRCTにおける広範な網状陰影(30%以上)を認める3)BALで好中球増加および/またはリンパ球増加なし4)臨床医、放射線医、病理医による確信度の高いIPFの診断、のずれかの所見がある場合にIPFと診断される可能性があります。

わが国では、2004年から独自の重症度分類(JSC)がIPFを含めた特発性間質性肺炎に対する厚生労働省指定難病の認定基準として用いられています。安静時動脈血酸素分圧(Pa02)と6分間歩行試験後の経皮的酸素飽和度(Sp02)最低値を組み合わせた分類です。これらは、慢性呼吸不全によるADLを評価する主要項目であるので、ADLに重きを置いた重症度分類といえます。重症度は軽いほうから、 I度、Ⅱ度、Ⅲ度、Ⅳ度の4つに分類されますが、安静時Pa02がⅡ度、Ⅲ度相当であっても、歩行後のSp02が90 %未満に低下するとそれぞれⅢ度、 Ⅳ度にランクアップするというように労作時低酸素血症の顕在化を付加させた点が独創的です。しかし、現行の重症度分類においていくつかの問題点が指摘されています。第一に安静時Pa02が健常者と変わらない80 Torr以上( I度)の患者であっても、歩行時Sp02が90 %未満となる一群が存在しますが、 の群において歩行後の低酸素血症の影響を加味しないことが妥当なのか不明であること、第二に下肢機能の低下などのため、もともと歩行障害を有する患者では正確な重症度判定ができないこと、第三に心不全など IPF以外の疾患に伴う呼吸不全の要素を排除できないことです。北海道のIPF患者326例の後ろ向きの解析によると、 JSCはIPF患者の予後を軽症例( I度とⅡ度)と重症例( Ⅲ度とⅣ度)の大まかに2群に弁別することがわかりました。しかしI度のうち歩行試験後に低酸素血症がある患者では予後が悪いことが指摘されており、この患者群をⅡ度とすることによって、予後弁別能が改善されることが報告されました。
さらに厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班から、 I度のうち歩行試験後に低酸素血症を認める患者群の SGRQ (St. George Respiratory Questionnaire)およびCAT (COPD Assessment Test)スコアで評価した QOLと生命予後はⅢ度の患者群のそれに匹敵することが報告されました。また、動脈血採血が侵襲的であるという問題もあり、 Pa02によらずとも安静時と歩行後のSp02を組み合わせることで十分な予後弁別ができることが報告されています。
重症度は軽いほうから、 I度、Ⅱ度、Ⅲ度、Ⅳ度の4つに分類されますが、安静時Pa02がⅡ度、Ⅲ度相当であっても、歩行後のSp02が90 %未満に低下するとそれぞれⅢ度、 Ⅳ度にランクアップするというように労作時低酸素血症の顕在化を付加させた点が独創的です。しかし、現行の重症度分類においていくつかの問題点が指摘されています。第一に安静時Pa02が健常者と変わらない80 Torr以上( I度)の患者であっても、歩行時Sp02が90 %未満となる一群が存在しますが、 の群において歩行後の低酸素血症の影響を加味しないことが妥当なのか不明であること、第二に下肢機能の低下などのため、もともと歩行障害を有する患者では正確な重症度判定ができないこと、第三に心不全など IPF以外の疾患に伴う呼吸不全の要素を排除できないことです。北海道のIPF患者326例の後ろ向きの解析によると、 JSCはIPF患者の予後を軽症例( I度とⅡ度)と重症例( Ⅲ度とⅣ度)の大まかに2群に弁別することがわかりました。しかしI度のうち歩行試験後に低酸素血症がある患者では予後が悪いことが指摘されており、この患者群をⅡ度とすることによって、予後弁別能が改善されることが報告されました。
さらに厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班から、 I度のうち歩行試験後に低酸素血症を認める患者群の SGRQ (St. George Respiratory Questionnaire)およびCAT (COPD Assessment Test)スコアで評価した QOLと生命予後はⅢ度の患者群のそれに匹敵することが報告されました。また、動脈血採血が侵襲的であるという問題もあり、 Pa02によらずとも安静時と歩行後のSp02を組み合わせることで十分な予後弁別ができることが報告されています。



A・治療目標
IPFは不可逆的な肺の線維化のために治癒は困難な状況であり、疾患の進行抑制による「生命予後の改善」が治療の最終目標となります。また、我が国の報告では、その死因の40%は「急性増悪」、24%は「慢性呼吸不全」、11%は「肺癌」といわれています。したがって「生命予後の改善」には、主な死因とされる「急性増悪」「慢性呼吸不全」「肺癌」の対策を目標とすることがIPF克服にとって最も重要と考えられています。
臨床試験における生命予後を代理的に示唆する指標 (surrogate marker)として,努力肺活量(FVC)の経時的変化はIPFにおける重要な予後因子のひとつであり、再現性も高く、わが国を含む世界各国で承認された2つの抗線維化薬(ピルフェニドン, ダニプ)はこのFVCの低下を有意に抑制するので、 IPFの進行速度の減弱という治療目標を達成しうる薬剤です。また近年,様々な分子や経路を標的とした薬剤がIPFの治療薬として続々と開発が進められ治験が進められていますが、その主要なエンドボイント「慢性期のIPF患者に対して投与を提案(CQ4, CQ5)」すると記載されています。
最近のレジストリーやメタ解析による検討では,抗線維化薬によるFVCの低下抑制とともに,急性増悪や呼吸器関連入院の抑制,予後改善が報告されており,最終目標である「生命予後の改善」につながることが期待されています。IPFのような治癒を得ることが困難な慢性疾患に対する医療行為のもうひとつの目標は,日常生活の質の維持・向上であり、これに関しては、健康関連QOL も含めた患者報告アウトカム(patient-reported outcome)が重要です。
しかし、現在, IPFにおいてこの目標達成は難しく、薬物療法のみならず、在宅酸素療法、呼吸リハビリテーション、栄養療法、緩和ケアなど多面的な戦略を展開していく必要があります。非薬物療法では特に様々な業種がかかわり、集学的に治療することが望ましいとされています。対症療法、禁煙、長期酸素療法,栄養指導、ワクチン接種などの意義については十分検証されていないものの、呼吸リハビリテーション、長期酸素療法など①症状の緩和、②運動耐容能の改善 ③健康状態の維持、改善が期待されます。そのため評価指標として6分間歩行試験の歩行距離や健康関連QOLが用いられることが多く、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、新型コロナワクチンなどは、 IPFの合併症、増悪の予防効果が期待されます。た最終的に肺移植,緩和ケアも検討が必要です。
B.治療開始時期・診療間隔
IPFは多様性のある疾患(heterogeneous disease)とされ、進行速度には個人差があります。
2つの抗線維化薬が承認されていますが、その推奨の度合いは強いものではなく、また種々の副作用や薬剤費を考慮すると治療開始時期は慎重に検討されるべきです。さらには、患者の年齢やIPF以外の合併症も考慮する必要があります。ガイドラインで採用された工ビデンスの多くは、臨床試験によるものであり、実地臨床での判断に適合できるとは限らないことも考慮し、利益 (benefit)と不利益(risk)、そして患者の希望を考慮して治療開始を判断すべきです。まず、診断時には、重症度評価と治療介入の裏付けとなる予後因子の評価を行い、予後不良因子があれば治療開始を検討します。
直ちに治療を開始しない場合には、経過での進行速度を確認し、長期的に安定であれば無治療で経過観察を行い、緩徐進行の場合には抗線維化薬を中心に治療を検討します。急速進行性の場合は治療を開始し、また,経過中に急性増悪をきたせば直ちに治療を行います。
IPFは、基本的には慢性かつ進行性の経過をたどるため、早期治療介入が重要ですが、 欧米でもわが国においても、特に軽症例における抗線維化薬治療導入率は低いのが現状です。 定期的な診療は疾患管理のうえで重要であり、症状や呼吸機能、画像などの定期的な評価により、治療薬や在宅酸素療法の適応を評価し、また、気胸や肺癌の合併の早期発見にもつながります。
診療間隔の設定は施設により差がありますが、軽症で安定している場合でも当初は3カ月に1回程度の診療が望ましく、重症例や明らかな進行例では診療間隔を短くして対応する必要です。胸部 HRCTを頻回に撮像することは放射線被曝の点から避けたいのですが、詳細な評価を行う際には施行されます。 6 分間歩行試験は、在宅酸素療法の適応や重症度判定に用いられ、進行の評価にも役立ちます。肺拡散能(DLco) は有用な検査ですが、進行例では施行が困難です。
C.治療の評価法
評価指標(エンドポイント)は、治療行為の有効性を示すための評価項目です。臨床試験のエンドポイントは、治療の目標・目的に合い、なおかつ客観的に評価できる項目が望ましいとされています。治療介入による臨床試験で本来求めるべき結果、アウトカムは、「生命予後の改善」「死亡率の低下」「疾患の発症率の低下」「入院率の低下」「健康状態・健康関連QOLの向上」「副作用の低減」などで、これらの評価項目は真のエンドポイントと呼ばれています。
しかし、それらを治験の期間内で評価することが難しい場合、糖尿病では血糖値、肺癌では腫瘍サイズ、高血圧症では血圧、 IPFでは呼吸機能や運動耐容能などが、短期間で評価できる代用工ンドボイント(サロゲートエンドボイント)として採用されてきました。 IPFの評価指標として、全死亡率の低下を証明することが理想ですが、それには膨大な症例数と多大なコストがかかるため、全生存率の代用エンドボイントとして多くの場合、FVC、時に肺活量(VC)が用いられています。他に肺拡散能(DLco)、Pa02, 6分間歩行試験(6 MVVT)、増悪生存期間(PFS)、副作用(AE)が用いられています。治験や治療,介入の目標によって、様々な指標が用臨床試験で良好な結果が得られています。また, FVCの経時的測定は、通常来院時に生理検査室で測定される。最近は家庭で実施できる簡便なスパイロメーターもう使用されています。近年,経時的なFVC,画像の悪化症状の悪化で定義される、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PFILD)はIPFに準じて,抗線維化薬の治療対象となっています。 IPFはその代表です。 FVC、画像所見, 症状の悪化のスピードの評価も重要な代用エンドボイントです。疾患進行のモニタリングとして、呼吸機能、血液検査、 HRCTなどが行われますが、国際ガイドラインでは必要に応じて4~ 6カ月と記載されていますが、現場での検査の種類や頻度は国によってばらつきがあります。最近、 IPF以外で1年間のFVC、 DLco の低下、画像の悪化、症状の悪化で定義する進行性肺線維症(PPF)が国際ガイドラインで提案されています。 KL-6やSP-Dなどの血清バイオマーカーの測定はわが国では保険適用もあり、しばしば間質性肺炎の評価に利用されています。一方,海外では承認されていないこともあり,治験や臨床試験では多くの場合に研究的エンドボイントとされていますが、血液検査は繰り返し実施でき,経過の評価に適している.進行性あるいは予後を反映する血液や遺伝子の新たなバイオマーカーの開発が進められています。
さらに急性増悪までの期間、呼吸器関連入院までの期間も重要なアウトカムです。呼吸困難や咳などの症状、生活や仕事の障害や患者の負担を含めた評価も重要です。患者自身が症状や健康関連QOLを評価する、患者報告アウトカム(PRO)が近年注目されています。
また、複数のエントポイントも合わせて総合を評価する、複合エンドポイントが用いられることもあります。IPFの治療の目標を明確にして、適切な評価法、指標を用いることは重要です。

1.急性増悪
IPFの急性増悪の年間発症率は5〜15%とされています。急性増悪はIPFの死因としても重要です。急性増悪の診断基準は、国内外で幅がありますが、最近では原因不明のみでなく誘因のあるものも急性増悪と認識されています。(例:感染、処置後/術後、薬剤性、誤嚥など)
最近の研究では誘因の有無での予後は同等と報告されています。急性増悪は予後不良の病態であるので発症予防が重要で、抗線維化薬による有効性が報告されています。全身麻酔や気管支鏡検査を契機に急性増悪を発症することがあり、 IPFの診療において注意が必要です。
急性増悪に対して良質な工ビデンスを有する治療法は確立していませんか、高用量のステロイド全身投与, ならびに免疫抑制薬の併用も試みられています。呼吸管理としては、高流量鼻カニュラ(HFNC)酸素療法および非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を試みてもよく、急性増悪は重症化するほど予後不良となるので早期診断、早期治療が望まれます。治療目標としては致死的状態からの回復、残存肺機能の維持、薬物治療による有害事象回避、再発予防などがあげられます。
2.気胸・縦隔気腫
気胸や縦隔気腫は、IPFの経過中にしばしば起こる合併症であり、急激な胸痛や呼吸困難の悪化を認める際には考慮する必要があります。IPFの予後不良因子でもあり、ステロイド使用により合併頻度が高くなり、難治性となる可能性が高いです。
気胸自体、あるいは胸膜癒着術や外科的治療などの気胸治療により、IPFの急性増悪をきたす可能性があり、これらには十分なインフォームドコンセントを必要とします。胸膜癒着術に関しては、 OKー432 (ピシバニール)などによるchemical pleurodesisではIPFの急性増悪が危惧され、自己血によるblood-patch pleurodesisが比較的安全とされています。
3.肺癌
IPFでは5~30%に肺癌を合併、相対リスクは7〜14倍とされ、肺癌の独立した危険因子と考えられています。また、IPFの重要な予後因子のひとつです。
日本人IPF患者の死因としても、肺癌は急性増悪、慢性呼吸不全に次ぐ第3位(11%)です。
IPFの経過観察においては、肺癌発症に注意が必要ですが、背景の間質性陰影のため、胸部X線のみでは肺癌の発見が遅れる可能性があり、適時、胸部CTによる注意深い評価が必要です。
IPF合併肺癌の治療に関しては、外科治療、薬物療法、放射線治療のいずれもが、致命的な急性増悪の契機となりうることに注意が必要です。 I / Ⅱ期非小細胞肺癌は手術適応になりますが、術後急性増悪のリスク因子として、男性、術前ステロイド投与、急性増悪既往、 %肺活量低値、画像上UIPパターン、血清KL-6 高値、区域切除以上の術式が同定されます。
放射線治療は放射線肺炎のリスクから回避すべきです。 また,化学療法は薬剤性肺障害のリスクのため大きく制限されます。化学療法による急性増悪のリスクとして、HRCTにおけるUIPパターンや肺活量低値などが報告されています。
4.肺感染症
IPFにおける蜂巣肺などの肺線維化病変には、アスペルギルスや抗酸菌が感染することが経験されています。さらに、ステロイドや免疫抑制薬の使用下では易感染状態から、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス肺炎などのリスクが高くなります。
しかし、感染症のリスクが上昇する投与量/投与期間について、また予防的治療法は十分確立されていません。
ニューモシスチス肺炎に対しては、ST合剤やアトバコンの内服、ペンタミジンの吸入などの予防的投与を考慮します。
5.肺高血圧症
IPFでは、肺高血圧症を合併することがあり、合併した場合、予後不良であることが報告されています。
特に、気腫合併肺線維症(CPFE)では合併頻度が高く、予後不良です。肺高血圧症の合併は、高度の労作時呼吸困難や頻脈を認める場合、FVCに比較してPaO2やDLcoの低下が大きいこと、胸部CTにおける肺動脈径/大動脈径比が大きいこと、心エコー所見などから推察されますが、確定診断には右心カテーテル検査が必要です。
2022年の欧州心臓病学会 (ESC)および欧州呼吸器学会(ERS)の肺高血圧に関する診断・治療ガイドラインにおいて,すべての前毛細血管性肺高血圧症は,、① mPAP>20mmHg, ② 肺血管抵抗(PVR)≧2W.U、 ③肺動脈楔入圧≦15 mmHgのすべてを満たすものと定義され、 IPFに合併する肺高血圧症に対する確立された治療法ではありませんが、 ILDに対する吸入トリプロスチニル(本邦未承認)の投与16週での運動耐容能(6MWD), NT-proBNPおよびFVCの改善効果が報告され、ESC/ERSガイドラインでは投与を検討して良いとしています。一方、 IPFにおけるアンプリセンタン、 ILD におけるリオシグアトの使用は有害事象を増やすとの報告から、 ESC/ERSガイドラインでは推奨しないとしています。
6.胃食道逆流
胃食道逆流(gastroesophageal reflux:GER)はIPFにしばしば合併し、不顕性誤嚥によるIPFの増悪も想定されています。制酸薬治療あるいは逆流防止手術は、IPF患者の呼吸器関連アウトカムを改善させるとする十分なエビデンスはないと結論付けられています。ただし、GER症状があるIPF患者においては、GER関連アウトカムの改善のために制酸薬治療は適応となるとしています。また、ステロイド使用下では副作用対策としてプロトンポンプ阻害薬などを併用することも多く見られます。

1.禁煙
喫煙は間質性肺炎の発症、病態悪化のリスクであり、さらにはCOPDや肺癌、心疾患や脳梗塞などの原因ともなるため、必ず禁煙を行います。また、酸素療法を行っている場合、喫煙は火災、火傷事故につながるため、禁煙が必須です。喫煙はIPFの独立した危険因子であり、また、IPF患者における喫煙者と非喫煙者の予後を比較した報告では、喫煙者のほうが予後不良とされています。咳嗽の軽減、体重減少の防止、感染予防からも禁煙は重要です。
2.感染予防
感染予防として肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチンの接種が推奨されます。IPFの急性増悪は、明らかな原因菌が証明されなくとも、上気道感染症状がきっかけとなる場合が多く、冬季に多いとされています。
そこで、外出時のマスクの着用、手洗い、うがいの励行、上述のワクチンの予防接種などを勧め、空気の悪い場所や人ごみを避け、感冒症状のある人との接触を避けるようにします。
3.在宅酸素療法
慢性的に線維化が進行し慢性呼吸不全(低酸素血症)になっている場合、あるいは肺高血圧症を合併している場合には、在宅酸素療法の対象となります。酸素投与量の設定に際しては、IPFは安静時と比べて労作時に著明な酸素飽和度の低下が起こりやすい点を考慮し、COPDに比して労作時に高流量を必要とすることが多く、携帯酸素を外出などの労作時に使用することをみられたくないという心理もありますが、労作時には酸素を増量して使用すべきで、IPFでは終末期でない限り、二酸化炭素の蓄積を考慮する必要はなく、十分な流量の酸素吸入を行うことが重要です。
4.呼吸リハビリテーション
エビデンスが確立されているCOPDと比較し、IPFにおける呼吸リハビリテーションの効果は明確にはされていませんが、運動耐容能、労作時呼吸困難、健康関連QOLの改善が報告されており、IPFの治療に関する国内外のガイドラインにおいても、エビデンスは弱いながらも推奨されています。 IPFでは下肢の大腿四頭筋筋力の低下が運動耐容能低下に関連しており、リハビリテーションは下肢の運動療法が主体となります。また、IPFをはじめとする間質性肺炎患者は胸郭の可動性が低下するため、肺活量や1回換気量の低下をきたし、その結果、少ない1回換気量で換気を維持しようとするため、代償的に呼吸数が増加する浅く早い(rapid shallow)呼吸になっており、胸郭のストレッチなどにより可能な限り胸郭の動きを維持していく必要があります。
5.福祉
IPFは厚生労働省の指定難病であり、外科的肺生検が未施行でも胸部HRCT所見を基本とした診断が許容されています。難病医療費助成制度が2015年1月に改訂され、重症度が比較的軽いI、Ⅱ度であっても、3カ月以上医療費が高額であれば申請可能となり、早期治療に対する患者の負担軽減がなされています。低呼吸機能・慢性呼吸不全症例は身体障害者(呼吸器機能障害)に該当するので、該当する等級を確認したうえで申請を検討します。抗線維化薬を処方される機会が増え、経済的負担の増大が危惧されるため、福祉政策は重要です。
6.精神的配慮
予後も含めた疾患の説明と検査の意義を十分に説明を受けます。
IPFは癌に準じて予後が不良であり、治癒に向かう治療法はなく、終末期医療について、挿管・人工呼吸についても、事前に家族内でよく相談しておく必要があります。外科的肺生検では危険性と利益を十分に説明を受けることが重要です。IPF患者は精神的健康も障害されており、特に呼吸困難や健康関連QOLに障害がある患者ではうつ状態であるとの報告もなされており、精神的なサポートも重要です。
7.その他
規則正しい生活を基本とし、安定した室温と適度な加湿により、快適な生活を心がけます。外出時には衣類の調節をして温度差を少なくします。また、身体活動性を高めるべく、積極的な社会参加や趣味を持つなど活動的な生活習慣を維持します。 body mass indexや体重減少が予後とも関連している点も考慮し、定期的な体重測定を日常管理として行い、体重減少に注意します。肺高血圧症を合併している患者では、塩分制限をします。高齢者は、咳嗽が肋骨骨折の原因となることもあり、注意が必要です。
梅屋敷さわもとクリニック 院長
澤本 修一
帝京大学医学部卒業後、都立広尾病院呼吸器科、帝京大学附属病院第二内科、社会保険都南総合病院に勤務。2002年に梅屋敷診療所を開設し、現在は梅屋敷さわもとクリニック院長として診療を行っています。呼吸器、特に気管支喘息の研究経験を生かし、呼吸器疾患やアレルギー疾患の診療に取り組んでいます。
主な資格
認定内科医・認定産業医
身体障害者福祉法指定医(呼吸器機能障害)
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