びまん性肺疾患・間質性肺炎
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びまん性肺疾患・間質性肺炎
長引く乾いた咳、坂道や階段での息切れ、健康診断での胸部X線・CT異常などをきっかけに、びまん性肺疾患や間質性肺炎が見つかることがあります。本ページでは、びまん性肺疾患の全体像から、特発性間質性肺炎、特発性肺線維症(IPF)の診断・治療までを患者さん向けにわかりやすく解説します。
びまん性肺疾患とは、胸部X線写真や胸部CTで、両方の肺に広い範囲にわたって異常な陰影がみられる病気の総称です。
「びまん性」とは、一か所だけではなく、広い範囲に病変が広がっている状態を意味します。びまん性肺疾患は一つの病気の名前ではなく、原因不明の間質性肺炎、環境・職業に関連する肺疾患、膠原病に伴う肺疾患、薬剤性肺炎、感染症、腫瘍性疾患、心血管疾患など、多くの病気を含みます。

代表的なびまん性肺疾患を下の表に示します。
| 特発性間質性肺炎 | 特発性肺線維症(IPF)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、bronchiolocentric interstitial pneumonia、急性間質性肺炎(AIP)、pleuroparenchymal fibroelastosis、特発性リンパ球性間質性肺炎、特発性器質化肺炎(COP)、呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患、alveolar macrophage pneumonia(旧剥離性間質性肺炎)など |
|---|---|
| 過敏性肺炎 | 鳥関連、夏型・住居関連過敏性肺炎、加湿器肺、農夫肺、塗装工肺など。非線維性と線維性に分類されます |
| 膠原病肺 | 関節リウマチ、皮膚筋炎、全身性硬化症(強皮症)、Sjögren症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、ANCA関連血管炎など |
| 医原性肺炎 | 薬剤性肺炎(薬剤・漢方薬・サプリメントなど)、放射線肺炎、酸素中毒 |
| 塵肺 | 炭鉱夫肺、石綿肺、アルミニウム肺、超硬合金肺、インジウム肺など |
| 肺胞を主な病変とする疾患 | 好酸球性肺炎、肺胞蛋白症、リポイド肺炎など |
| その他の間質性肺疾患 | 分類不能型間質性肺炎など |
| 肉芽腫性疾患 | サルコイドーシス、肺Langerhans細胞組織球症など |
| 腫瘍性疾患 | がん性リンパ管症、浸潤性粘液性腺癌、悪性リンパ腫、Castleman病など |
| 感染症 | 粟粒結核、肺結核、非結核性抗酸菌症、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎、ニューモシスチス肺炎など |
| 心血管疾患 | 心原性肺水腫、肺胞出血、肺梗塞など |
| 気道疾患 | びまん性汎細気管支炎、閉塞性細気管支炎など |
| その他 | 肺胞微石症、リンパ脈管筋腫症、IgG4関連肺疾患、非心原性肺水腫、急性呼吸促迫症候群(ARDS)など |
びまん性肺疾患という大きなグループの中に「間質性肺炎」という病気のグループがあります。さらに、その中に原因不明の「特発性間質性肺炎」があり、代表的な病気の一つが特発性肺線維症(IPF)です。


肺の中には「肺胞」と呼ばれる非常に小さな袋がたくさんあり、吸い込んだ酸素は肺胞から血液へ移動します。肺胞の壁やその周囲の組織を「間質」と呼びます。
この間質に炎症が起きたり、線維化によって厚く硬くなったりする病気を広く間質性肺炎と呼びます。線維化が進むと肺が硬くなり、酸素を取り込みにくくなるため、乾いた咳や息切れが現れることがあります。

CTで間質性肺炎のような陰影が見つかっても、すぐに特発性肺線維症と診断するわけではありません。まず、原因のある間質性肺炎ではないかを詳しく調べます。
患者さんの職業、住環境、ペット特に鳥の飼育歴、羽毛布団などの使用歴、趣味、使用している薬剤や漢方薬・サプリメントなどを詳しく確認することがあります。
間質性肺炎の原因について詳しく調べても明らかな原因を特定できないものを、特発性間質性肺炎(IIPs:Idiopathic Interstitial Pneumonias)と呼びます。
この中で最も代表的で、慢性的に肺の線維化が進行する病気が特発性肺線維症(IPF)です。
IPFは、明らかな原因がないにもかかわらず、肺の線維化が徐々に進行していく病気です。肺が次第に硬くなり、酸素を取り込みにくくなるため、乾いた咳(空咳)や坂道・階段での息切れが代表的な症状です。
初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断の胸部X線やCTをきっかけに発見されることもあります。
乾いた咳(空咳)乾性咳嗽
痰をあまり伴わない乾いた咳が長く続くことがあります。風邪が治ったあとも咳だけが残る、という形で気づかれることもあります。
息切れ(労作時呼吸困難)
初期には平地では気にならなくても、坂道・階段・早歩きなどで息切れを感じることがあります。進行すると、日常生活の中でも息切れを感じるようになることがあります。
自覚症状が少ない段階でも、胸部X線やCT検査で異常を指摘され、発見される場合があります。
IPFの診断は、ひとつの検査だけで決まるわけではありません。問診、診察(聴診にて捻髪音と慢性IPF
では、ばち指が認められます)、胸部CT、呼吸機能検査、血液検査などを組み合わせ、総合的に判断します。
診断の前提として、薬剤性肺炎、過敏性肺炎、膠原病に伴う間質性肺炎、感染症など、原因のある間質性肺炎をできるだけ除外することが大切です。
胸部CT検査
IPFを考えるうえで非常に重要な検査です。肺のどの部分に、どのような陰影が広がっているか、線維化がどの程度みられるかを確認します。
呼吸機能検査
肺活量(VC)や努力肺活量(FVC)は最も信頼できる予後予測因子です。一回の数値だけではなく、時間とともにどのように変化しているかをみることが重要です。(経時的変化)
血液検査
KL-6(肺癌合併時に上昇することがある)、SP-Dなどの値を参考にすることがあります。ただし、血液検査だけで確定診断がつくわけではなく、補助的な情報として用います。
6分間歩行試験・SpO₂測定
歩行距離の短縮、酸素飽和濃度最低値88%以下あるいは未満、歩行後心拍数増加の回復の遅れは予後予測因子です。

現在のところ、IPFで線維化した肺を完全に元に戻すことは困難です。しかし、病気の進行をできるだけ抑え、日常生活を支える治療があります。
抗線維化薬
IPFでは、ピルフェニドン、ニンテダニブなどの抗線維化薬が治療選択肢となります。これらの薬は肺の線維化の進行を遅らせることが期待されます。
薬を開始するかどうかは、年齢、症状、FVCやDLCO、CT所見、病気の進行速度、合併症、副作用、患者さんの生活状況や希望などを総合して判断します。
ステロイドについて
慢性安定期のIPFでは、ステロイドや免疫抑制薬を通常の治療として用いることは推奨されません。一方、IPF以外の間質性肺炎ではステロイドが有効な場合があります。そのため、病型を正しく見極めることが重要です。
在宅酸素療法・呼吸リハビリテーション
低酸素血症がある場合には在宅酸素療法を検討します。また、無理のない範囲での運動や呼吸リハビリテーションは、体力や日常生活動作を保つために役立ちます。

肺炎などの感染症は呼吸状態の悪化につながることがあるため、体調変化があれば早めに相談してください。

びまん性肺疾患や間質性肺炎は、診断に専門的な判断を要する病気です。当院では、問診、画像、呼吸機能、酸素の状態を丁寧に確認し、必要に応じて専門医療機関と連携しながら診療を行います。
間質性肺炎では、現在の画像だけでなく、過去の画像との比較が病気の進み方を判断するうえで非常に重要です。
日本呼吸器学会 びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会ほか 編『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 2022(改訂第4版)』南江堂。
※本ページは、患者さんに病気を理解していただくための一般的な医学情報です。個々の患者さんの診断・治療は、症状、画像、呼吸機能、合併症などによって異なります。急な呼吸困難などがある場合は、通常の予約を待たず速やかに医療機関へご相談ください。
梅屋敷さわもとクリニック 院長
澤本 修一
帝京大学医学部卒業後、都立広尾病院呼吸器科、帝京大学附属病院第二内科、社会保険都南総合病院に勤務。2002年に梅屋敷診療所を開設し、現在は梅屋敷さわもとクリニック院長として診療を行っています。呼吸器、特に気管支喘息の研究経験を生かし、呼吸器疾患やアレルギー疾患の診療に取り組んでいます。
主な資格
認定内科医・認定産業医
身体障害者福祉法指定医(呼吸器機能障害)
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