睡眠時無呼吸症候群の分類
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睡眠時無呼吸症候群の分類

無呼吸中にも呼吸努力を伴う閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)と、呼吸努力を伴わない中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea:CSA)があります。チェーンストークス呼吸はCSAの一種であり、心不全、脳卒中などの疾患で見られることが多く、最もよく見られる病態はOSAであり、肥満、加齢、男性が重要な発症要因と考えられています。
無呼吸とは睡眠中に10秒以上の気流停止があった場合無呼吸と判定し、10秒以上の30%以上の気流低下に3%以上の酸素飽和濃度の低下あるいは覚醒反応を伴う場合に低呼吸と判定します。睡眠時無呼吸の診断基準は1時間あたりの無呼吸と低呼吸の総数を無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)といって睡眠時無呼吸の診断に用いられます。
10秒以上継続する呼吸努力の後に覚醒を伴った場合に呼吸努力関連覚醒反応(respiratory effort related arousal:RERA)と呼ばれ睡眠時無呼吸の評価項目においてオプションとして扱われています。
成人において、AHIが5以上で閉塞性優位であり眠気や疲労感などの臨床症状を伴う場合、あるいは臨床症状がなくてもAHIが15以上で閉塞性優位である場合にOSAと診断されます。
| a.軽症 | 5≦AHI<15 |
|---|---|
| b.中等症 | 15≦AHI<30 |
| c.重症 | AHI≧30 |
在宅睡眠時無呼吸検査における測定1時間あたりの睡眠呼吸障害(無呼吸・低呼吸)の回数は呼吸障害指数(respiratory event index:REI)と呼ばれます。以前は、REIをrespiratory disturbance index(RDI)と表現することもありましたが、現在RDIは睡眠1時間当たりの無呼吸・低呼吸・RERAの総数とされています。現在CPAPの保険適応基準はAHI 15以上あるいはAHI(REI) 30以上で日中の傾眠などの自覚症状の強い症例となりました。
睡眠脳波などを備えた睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)が標準的検査です。装着が煩雑なため、通常入院して行います。また、簡易モニターと呼ばれるPSGを簡略化し睡眠時無呼吸、特にOSAの診断に焦点を当てた検査機器を用いる外来ベースの検査も普及しています。通常、患者や家族等に使用方法を説明し居宅にて装着して検査が行われ、いわゆる検査施設外睡眠検査(out of center sleep test :OCST)
のひとつとされています。簡易検査では、睡眠時間を睡眠脳波で客観的に判定できないので睡眠1時間あたりではなく検査1時間あたりの平均回数となるためAHIではなく呼吸イベント指数(respiratory event index:REI)と呼ばれています。
1. OSA
成人のOSAの診断基準は下記の(aとb)またはcに加えてdを満たす場合とされています。
a.①~③のうち最低一つを満たすもの。
b.PSGで睡眠1時間当たり、あるいはOCSTで記録時間1時間当たり5回以上の閉塞性優位な呼吸イベントが認められる。
c.PSGで睡眠1時間当たり、あるいはOCSTで記録時間1時間当たり15回以上の閉塞性優位な呼吸イベントが認められる。
2. CSA
CSAの診断は、簡易検査ではCSAの診断はむずかしくPSGを行うことが推奨されています。ここではCSAの中で遭遇することの多いチェーンストークス(Cheyne-Stokes breathing:CSB)呼吸を伴うCSA(CSA-CSB)を紹介します。
下記の(aあるいはb)かつcかつdを満たす場合です。
a.①~④のうち最低一つが存在する。
b.心房細動や粗動、うっ血性心不全、あるいは神経疾患が存在する。
c.PSGで、次のすべてを満たす。
d.症状は、その他の併存する睡眠障害、身体疾患、薬物(オピオイドなど)もしくは物質の使用ではよく説明できない。
OSAの治療は、症状の改善と合併症併存症への好影響を期待して行われます。中等症以上の場合は生活習慣病や循環器疾患といった合併症・併存症の発症リスクが上昇し、死亡リスクの上昇にも関与するため、積極的に治療を考慮するべきです。通常はCPAP療法が第一選択になります。
CPAP療法
2026年6月1日より、自覚症状+睡眠の質低下+PSGでAHI 15以上または自覚症状+簡易検査によるREI 30以上で導入可能となっています。
機器は医療機関を介してレンタルされ、レンタル料が健康保険でカバーされます。CPAP療法はAHIや睡眠指標改善、自覚症状やQOLの改善のみならず生活習慣病や循環器疾患に対する効果も示されていますが、心血管イベント予防を目的としたCPAPの有効性は確立していません。
減量
肥満は、OSAの最大リスク因子です。減量により上気道閉塞が減少し、無呼吸が軽快する可能性があります。
生活習慣の改善
飲酒は呼吸中枢へ影響し、上気道開大筋弛緩を介してOSA発症に関与するため就寝前の禁酒が推奨されています。喫煙も上気道の炎症を介してOSAの発症リスクが増加したという報告があり禁煙が推奨されています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬はOSAを重症化する可能性があるため、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のオレキシン受容体拮抗薬がAHIなどに影響しないことからこれらの使用を考慮することが推奨されています。
COPDと閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が合併すると無呼吸による間欠的低酸素血症とCOPDによる持続的な低換気が重なるため、単独疾患より高度な低酸素負荷を呈する。これにより肺高血圧症や肺性心、虚血性心疾患、心不全などの心血管疾患のリスクが有意に高まり生命予後が悪化します。
閉塞性睡眠時無呼吸との鑑別が臨床上重要となります。閉塞性睡眠時無呼吸による呼吸困難は、無呼吸からの覚醒と呼吸再開に伴い速やかに緩和されますが、気管支喘息では症状が持続的である点が鑑別の指標となります。両疾患は単なる鑑別対象ではなく高率に合併し、互いに悪化させ合う関係にある点に注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群は循環器診療の現場において極めて高頻度に遭遇する疾患ですが、見逃されている場合が多く循環器診療において睡眠に関する問診が十分に行われていないことも一因と考えられています。
閉塞性睡眠時無呼吸は二次性高血圧の代表的な原因のひとつで、治療抵抗性高血圧、夜間高血圧、早朝高血圧、仮面高血圧の重要な病態背景として位置づけられています。降圧薬を複数併用しても血圧コントロールが不十分な症例や、家庭血圧において夕方測定値と比較して起床時測定値が高値を示す症例では肥満の有無にかかわらず閉塞性睡眠時無呼吸の合併を積極的に疑うべきです。閉塞性睡眠時無呼吸の適切な診断と治療介入により、血圧日内変動の是正や降圧効果の上乗せが得られる場合もあり、高血圧診療において閉塞性睡眠時無呼吸を病態背景として捉える視点は不可欠です。
睡眠時無呼吸症候群は動脈硬化性疾患の進展にも深く関与しています。
特に閉塞性睡眠時無呼吸及び夜間低酸素は、心筋梗塞発症時刻の概日リズムと関連し、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸では深夜帯の心筋梗塞発症が増えることが報告されており、夜間から早朝に虚血イベントが多いという臨床所見を支持しています。虚血性心疾患患者では、症状の有無にかかわらず睡眠時無呼吸症候群を合併している場合が少なくなく、再発予防や長期予後の観点からも病態背景としての睡眠時無呼吸症候群評価が重要です。
睡眠時無呼吸症候群は心房細動の発症および再発リスクと密接に関係があり、
不整脈基盤そのものに関与する修飾因子として位置づけられています。心房細動患者では不整脈治療の成否を左右する重要な因子として睡眠時無呼吸症候群の評価が不可欠です。近年重症睡眠時無呼吸症候群を合併した心房細動患者を対象とした研究において、持続的なCPAP治療の遵守が、アブレーション後の心房細動再発リスク低下と関連することが報告されました。
心不全患者では閉塞性睡眠時無呼吸に加え中枢性睡眠時無呼吸やチェーンストークス呼吸を合併することがあります。中枢性睡眠時無呼吸症候群は循環時間延長、換気調節系の不安定性、肺うっ血などを背景に出現し、心不全の病態不安定性を反映する所見と考えられています。臨床的には日中の眠気よりも、夜間呼吸困難、労作時息切れ、心不全再入院といった循環器イベントとの関連が目立ちます。治療の基本は心不全管理の最適化であり、うっ血の改善や循環動態の安定化により中枢性睡眠時無呼吸が軽減する例も少なくないことから、睡眠時呼吸障害は心不全の重症度や病態変化を示す臨床的サインとして捉えておくことが重要です。
睡眠時無呼吸症候群に対する治療介入は、血圧、心不全症状、不整脈負荷の軽減などを通じて循環器病態の安定化に寄与します。睡眠時無呼吸症候群治療は単独で完結するものではなく、循環器疾患治療の一環として位置付ける視点が求められます。
閉塞性睡眠時無呼吸は脳血管障害発症および死亡の独立したリスク因子です。脳血管障害患者において約半数以上に睡眠時無呼吸が合併するといわれています。特に閉塞性睡眠時無呼吸の重症例では、無症候性脳血管障害や深部白質病変、脳血管障害発症リスクが増加します。一方、中枢性睡眠時無呼吸は脳血管障害発症後に新たに出現しうる病態です。脳血管障害後の中枢性睡眠時無呼吸では睡眠中に周期的な換気の漸増・漸減を特徴とするチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes breathing:CSB)が代表的です。CSBは意識障害を伴う広汎な大脳半球性脳血管障害や、間脳・脳幹病変においてしばしば認められます。
梅屋敷さわもとクリニック 院長
澤本 修一
帝京大学医学部卒業後、都立広尾病院呼吸器科、帝京大学附属病院第二内科、社会保険都南総合病院に勤務。2002年に梅屋敷診療所を開設し、現在は梅屋敷さわもとクリニック院長として診療を行っています。呼吸器、特に気管支喘息の研究経験を生かし、呼吸器疾患やアレルギー疾患の診療に取り組んでいます。
主な資格
認定内科医・認定産業医
身体障害者福祉法指定医(呼吸器機能障害)
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