呼気NO検査
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呼気NO検査

当院の咳外来には様々な方が受診されます。その中で気管支喘息は、診断が難しい病気の一つです。典型的な身体所見があれば分かりやすいのですが、典型的な症状が出現する時間帯は、深夜の午前3時ごろと言われており、昼間の診察時間には典型的症状がみられない方も多く存在します。聴診器を当てられただけで、喘鳴(息を吐くときにゼーゼー、ヒューヒューする音がすること)がないことを理由に気管支喘息を否定され、長年感冒と診断され、なかなか改善されず、気管支喘息症状を発症して初めて診断がついた方もいます。
一方、咳喘息は、喘鳴がないことが、気管支喘息との鑑別であると述べている教科書もありますが、咳嗽が主体の気管支喘息も存在し、両者の鑑別は困難です。さらに、咳喘息の咳嗽は、気管支拡張薬にて改善すると言われていますが、実際の臨床の場では、気管支拡張薬の使用で咳嗽が速やかに改善するのはまれです。当院では、問診票記載の段階である程度疾患を絞ることが可能です。しかし、診断に苦労する方も多く、問診票でグレーだった部分をクリアーにするための手段の一つが呼気NO測定です。
NOとは、一酸化窒素のことです。当院で実施している検査は、呼気中(吐く息)のNOを測定し、呼気NO濃度(FeNO)と表現しています。気管支喘息の場合、気道の炎症によりIL-4,IL-13を介して主に気道上皮・炎症細胞が産生します。呼気中のNO値は、喀痰中好酸球数、気管支生検における好酸球浸潤程度、および気管支肺胞洗浄液中の好酸球数と正の相関を示し、気道の好酸球炎症の評価に用いられています。すなわち、呼気中のNO値が高いことは、気道の好酸球の活動が活発であるということが推測されます。
好酸球はアレルギーを担当する重要な細胞です。NOの数値が高いということは、この細胞の活動が活発ということになり、アレルギーの病気が潜んでいることを暗示しています。逆に、NOの数値が低ければ、好酸球の活動性は低く、アレルギー疾患は除外できる可能性が高く、診断がしぼられ、患者さんの安心にもつながると考えています。さらに、気管支喘息患者さんにおいては、コントロールの指標としても用いられています。
NOの測定は約2〜3分で結果が得られ、シンプルで苦痛のない検査です。
気管支喘息の診断では、発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳などの症状の反復に加えて、可逆性の気流制限や気道過敏性の亢進が重要ですが、気道の炎症の存在(喀痰中の好酸球増多、FeNO濃度の上昇)は喘息の診断を支持するものです。ステロイド薬を未使用患者で、発作性の喘鳴などの喘息を疑う症状に加え、FeNO値が22ppb以上であれば喘息の可能性が高く、37ppb以上ならほぼ確実に喘息と診断できると考えられます。咳喘息・喘息性咳嗽の診断に対するFeNOの上昇は咳喘息を示唆するが、感度が低く偽陰性が少なくないことに注意が必要です。
治療導入後の気管支喘息管理においてFeNO測定は、気道炎症のモニタリングに有用です。吸入ステロイド(ICS)によるFeNOの改善は、喘息の管理において有用で、平均値が15ppb以下に維持されている場合には気道炎症が制御されている可能性が高いと考えられます。
FeNOは喘息重症度との関連性は乏しいのですが、高値の例は低値例に比べて増悪リスク、呼吸機能の経年低下のリスクが高いことが報告されており、FeNOモニタリングは持続する気道炎症と関連する気流制限進行の予測に有効であり、生物学的製剤などの導入を考慮する際の目安になる可能性があります。しかし、FeNO値には個人差や様々な因子による変動があり、コントロールの状態とは乖離することもあるので、増悪予測、経年的呼吸機能の低下といった将来のリスク予測には、単回ではなく経時的に測定し、単独ではなくそれ以外の方法と併用して総合的に判断することが望ましいと考えられます。


梅屋敷さわもとクリニック 院長
澤本 修一
帝京大学医学部卒業後、都立広尾病院呼吸器科、帝京大学附属病院第二内科、社会保険都南総合病院に勤務。2002年に梅屋敷診療所を開設し、現在は梅屋敷さわもとクリニック院長として診療を行っています。呼吸器、特に気管支喘息の研究経験を生かし、呼吸器疾患やアレルギー疾患の診療に取り組んでいます。
主な資格
認定内科医・認定産業医
身体障害者福祉法指定医(呼吸器機能障害)
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